- しめる
- I
しめる(助動)〔使役の助動詞「しむ」の口語形。 現在では, 文章語的な表現や慣用的表現に多く用いられる〕用言や一部の助動詞の未然形に付いて, 使役, すなわち, 他にある動作をさせる意を表す。 せる。 させる。
「相手チームの戦意を失わ〈しめる〉に十分な速攻の成果だった」「心胆を寒から〈しめる〉」「私をして言わ〈しめれ〉ば」
→ しむ(助動)→ せる(助動)→ させる(助動)IIしめる【占める】(1)ある場所・地位などを, 自分のものとして, 他者が入りこまないようにする。 占有する。 (ア)自分の住んだり使ったりする場所とする。「商店街の一角を~・める銀行」「窓側に座席を~・める」「事務所は一階から五階までを~・めている」(イ)ある地位を自分のものとする。 「権力の座を~・める」「卒業までずっと首席を~・めていた」
(2)全体のある部分を専有する。「過半数を~・める」「反対意見が大勢(タイセイ)を~・める」「国土の五割以上を山林が~・める」
(3)土地や樹木が自分のものであることを示すため, 標識をほどこす。「我が背子が~・めけむ黄葉地(ツチ)に落ちめやも/万葉 4223」
(4)食べる。 飲食する。「牛で杯一(パイイチ)~・めたうへで/安愚楽鍋(魯文)」
︱慣用︱ 味を~・地歩を~IIIしめる【染める】(1)色や匂いをつける。 しみこませる。 現代語では, 動詞の連用形に付いて複合動詞として用いられる。「煮~・める」「香をたき~・める」「浅からず~・めたる紫の紙に/源氏(明石)」
(2)心などを, じっとそこに込める。 心を奪われる。「花の枝にいとど心を~・むるかな/源氏(梅枝)」
〔「染(シ)む」に対する他動詞〕IVしめる【湿る】(1)水分を含んで, しっとりする。 湿気を帯びる。「~・った布団を干す」「~・った空気」
(2)悲しみなどのために気持ちが沈む。「座が~・る」「劣勢に応援も~・りがちだ」
(3)静かになる。 ひっそりする。「夜深きほどの人の気~・りぬるに/源氏(椎本)」
(4)雨などの勢いが静まる。 おとろえる。「やう風なほり, 雨の脚~・り/源氏(明石)」
(5)態度や考え方が落ち着いている。「人ざまもいたう~・り, はづかしげに/源氏(絵合)」
(6)消える。V「火~・りはてて/蜻蛉(下)」
しめる【絞める】〔「締める」と同源〕(1)首を圧迫して息ができないようにする。「首を~・める」
(2)鶏などの首をひねって殺す。「鶏を~・める」
(3)「しぼる」に同じ。VI「油ヲ~・ムル/日葡」
しめる【締める・閉める】(1)まわりから強くおさえる。 《締》(ア)周囲にあるひもを強く引っぱり固く結ぶなどして, ゆるまないようにする。⇔ ゆるめる「運動靴のひもを~・める」「勝って兜(カブト)の緒を~・めよ」「財布のひもを~・める(=出費ヲオサエル)」(イ)体や物の周囲にひも状・帯状のものを巻きつける。「鉢巻きを~・める」「帯を~・める」「ネクタイを~・める」
(2)ひねったりして, ゆるみや空きがないようにする。 《締》(ア)ひねって固くする。⇔ ゆるめる「ねじをきつく~・めすぎた」(イ)鍵などを回して出入りを止める。⇔ あける「ガスの元栓を~・める」「鍵を~・める」(3)開口部をふさぐ。 とじる。 (ア)戸・窓・門などを動かしてとざす。⇔ あける⇔ ひらく「戸を~・める」(イ)その日の営業を終える。 また, 廃業する。⇔ あける⇔ ひらく「店を~・める」(ウ)ふたなどをとじる。「びんの口を~・める」「ふたを~・める」
(4)心や行動のたるみをなくす。 《締》(ア)自分の気持ちのたるみをなくす。 緊張させる。「~・めてかからないと負けてしまう」(イ)たるんだ人々を緊張させる。 「社内の規律を~・める」(ウ)むだな出費がないように努める。 「家計を~・める」
(5)(「〆る」とも書く)料理で, 魚の肉などが固くひきしまるようにする。 《締》「鯖(サバ)を酢で~・める」(6)その時点で一区切りとして, それまでの収支の合計を計算する。 《締》「月末に帳簿を~・める」→ 締めて(7)物事の結着がついたことを祝って, 当事者がそろって手を打つ。 手じめをする。 《締》「手を~・める」(8)取り決める。 話などをまとめる。「内証の跡先しやんと~・めてある/浄瑠璃・鑓の権三」
〔「しまる」に対する他動詞〕︱慣用︱ 箍(タガ)を~・手綱を~
Japanese explanatory dictionaries. 2013.